黄斑前膜

黄斑前膜

眼球後部の網膜の手前に膜が張って、黄斑がそれに遮られてしまう病気です。黄斑円孔と同じく硝子体収縮が関係しているので、やはり高齢者に多く、女性に起きやすい傾向があります。黄斑円孔のように視野の中心が全く見えなくなることはなく、一方で頻度的には黄斑円孔よりも多くみられます。

前膜のでき方と症状

加齢による後部硝子体剥離が起きる過程で、硝子体ポケットの後壁の一部に穴があき、後壁(硝子体の皮質)だけが網膜側に張り付いた状態となります。その後、残った硝子体の皮を包み込むようにして新たな細胞が増えたり眼球内のゴミのようなものが付着して、少しずつ黄斑前膜が形られます。黄斑前膜の約9割はこのように後部硝子体の剥離のあとに起きるタイプです。残りの約1割は、後部硝子体の剥離がまだ起きていない段階で、硝子体ポケットの後壁を包み込むような形で膜が形成される場合です。いずれのケースでも、前膜の形成が進むにつれて、ゆっくりと視力が低下していきます。また、物が歪んで見えたり、大きく見えたりもします。

硝子体の中の液化腔硝子体ポケット

硝子体はゼリー状の構造物が眼球内部を埋めていますが、眼球の後部、黄斑のすぐ手前の一部分だけは空洞になっています。この空洞を「硝子体ポケット」と呼びます。その中には水分が溜まっており硝子体ポケットの後ろ側は、薄い硝子体皮質だけで黄斑部網膜に接しています。
加齢とともにこの硝子体皮質が収縮すると、眼球の底に張り付いていた硝子体皮質が引っ張られて剥がれようとします。しかし中心窩では硝子体皮質と強い癒着しているため、硝子体皮質はなかなか剥がれず、中心窩は慢性的に引っぱられ、黄斑円孔が起きると考えられています。